世界のHPAI発生状況とその背景(3)
放飼養鶏がウイルス侵入を許した:欧州
2003年2月28日、オランダのドイツ国境に近いヘルデルランド(ゲルダーランド)州においてHPAI(高病原性トリインフルエンザ)が疑われる感染流行が6 軒の採卵鶏養鶏場で発生したと動物保健局から国立獣医学検査局(RVV)に報告された。感染養鶏場のすべてで高い致死率(80 %以上)が観察された。この段階でHPAI が強く疑われたため、農業省はEU 委員会の担当部局と協力して、EU 指令(理事会指令92/40/EEC)に基づく以下の防疫対策を実施した。
- オランダ全域での生きた家禽の市場、展示会、その他イベントの禁止(3月1日午前1時30分から)
- 発生が疑われる農場の周囲10キロメートル以内での生きた家禽、卵、ふん尿の運搬禁止(同午前1時30分から)
- 生きた家禽、卵(消費用卵を除く)、ふん尿の運搬禁止措置のオランダ全域への拡大(同正午から)
- 生きた家禽および卵のオランダからの輸出禁止(同正午から)
感染源となり得る接触のあった生産物、飼料、家畜についての家畜・食肉検査局による追跡、オランダ政府の迅速な対応にもかかわらず、3 月2 日時点の感染農場数は16 カ所に増加。感染拡大防止のため殺処分が開始された。 また3月2日には同国の国立獣医学研究所での確定診断によりHPAI(後にH7N7と判明)であることが確認された。こうした状況を受けて、EU 委員会は3 月3 日、オランダでのHPAI 発生に対するEU レベルでの防疫措置を決定し、生きた家きんと卵について、オランダから他の加盟国およびEU 域外への輸出を禁止した。日本では3月3 日から、オランダからの家きん肉、内臓、生きた家禽、卵等について輸入を停止した。
3月13日、HPAIに少なくとも5 名の家禽農場労働者が感染していることが確認された。彼らは急性結膜炎以外の症状は呈さなかった。インフルエンザH7N7 陽性であることが確認された。3 月14 日には19 名が、HPAIウイルスが病因の急性結膜炎に罹患したことが発表された。関係者の家族1 名が同じ型の感染症を罹患し、この症例から同ウイルスが人間から人間へ感染伝播し得ることが示された。しかし、目の感染自体は無害で、容易に回復した。こうした事態を受けて3 月15 日より、感染予防を目的に家きん選別の従事者には抗ウイルス剤の服用が義務付けられた。一般市民への感染危険性を減じるため、特に感染養鶏場の周囲に策定された保護域内の住民を対象にインフルエンザ予防接種を増加させた。
4 月19 日、HPAI の感染農場で作業していた57 歳の獣医師が死亡し、畜産関係者を中心に大きな動揺が広がった。死亡した獣医師の肺からはH7 ウイルス感染が確認された。この獣医師は急性肺炎を合併しており、H7ウイルスが直接の原因で人が死んだという結論にはなっていないが、その人がH7 ウイルスを体内に保有していた事実は残っている。オランダにおいても発生地域の5 カ所の混合農場で豚からインフルエンザウイルスに対する抗体が検出されていることは注目に値する。
感染数は初発後、3 月末にピークを迎えて以降、減少した。その後、4 月16 日にベルギーで、5 月9 日にはドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州でHPAI(H7N7)が確認されたが、オランダでは5 月1 日がコマーシャル農場での最終報告となった。5 月19 日現在での発生農場数は252 農場、殺処分羽数は約2,800 万羽となった。ベルギーでは8 農場で発生が確認され、約300 万羽が殺処分された。4 月28 日以降新たな発生は確認されていない。ドイツにおいては最初の発生のほかは新たな発生は報告されていない。
なお日本では、5 月10 日にはドイツの、4 月17 日にはベルギーの家禽肉等について、輸入を一時停止していたが、オランダは8 月12 日に、ドイツは8 月21 日に一時停止を解除している(ベルギーは同国からの情報が届くのを待ってから解除をする予定)。

